[北朝鮮]特区に外貨上納指示 平壌の住宅建設資金足りず

 【北京・西岡省二】北朝鮮指導部が首都・平壌で進める「10万世帯住宅建設」の資金不足を補うため、特別市に格上げした経済特区・羅先(ラソン)市に年間6000万ユーロ(約73億5000万円)という高額の外貨を“上納”するよう指示したことが分かった。国連安保理制裁などで外貨が不足、最重要課題である市民生活の向上もままならない北朝鮮の困窮ぶりが改めて浮き彫りになった。 北朝鮮指導部に近い関係者が毎日新聞に明らかにした。 「10万世帯住宅建設」は金正日(キム・ジョンイル)総書記が提案した事業で、平壌の住宅難を解消するため、1950年代の戦後復旧時に建設された古いアパートを取り壊して高層アパートを新築する計画。昨年8月には平壌で市民8万人が参加した決起集会も開かれた。 計画通りの住宅建設には最低でも40億ドル(約3597億円)が必要とされるが、昨年のミサイル発射などを受けた安保理制裁決議により外資が途絶え、資金不足の状態という。 このため、事業を監督する金総書記義弟の張成沢(チャン・ソンテク)朝鮮労働党部長が中心となって昨年末、既に「経済貿易地帯」に指定されていた羅先を通じた資金調達策を検討。今年1月に羅先を特別市に指定し、それまで中央政府が統括していた経済貿易地帯の運営方針の決定権を地元に移す一方、年間6000万ユーロの調達を義務づける通達を出した。特別市長に相当する党責任書記には、党の資金調達機関「39号室」の副部長を務めた経済通の林景満(リム・ギョンマン)元貿易相を送り込んだ。 羅先では既に市内の羅津(ラジン)港をめぐる動きが出ている。中国吉林省延辺朝鮮族自治州の李竜熙州長は最近、中韓メディアに対し、北朝鮮が同省やロシアに一部ふ頭の使用権を認めるなど対外事業を活性化させていることを明らかにした。同関係者は「羅先は過去に貿易・観光で6000万ユーロ程度の収入があった都市だ。今後、貿易拠点としての機能を強化し、中露を中心とした外国企業との関係を強めて資金確保の役割を担うことになる」と指摘する。 北朝鮮当局は故金日成(キム・イルソン)国家主席の生誕100周年を迎える12年に「強盛大国の大門を開く」との目標を掲げ、10万世帯住宅建設は重要な事業の一つに位置付けられている。

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